あ、とりとがとととう

001:笑
笑点の時間ですので帰りますってまちをでてとおくまできた
002:一日
永遠と名をつけられてひらかれた翼をもてぬままの一日
003:助
顕微鏡のぞくどうやらはつ恋が散ったようだわ葉脈め 助手
004:ひだまり
ひだまりに群れてはねむるクローバーふたりの指をむすんで咲いて
005:調
今までの句点をぜんぶ調べればあなたが好きといってるはずよ
006:水玉
ハコフグの水玉ひとつひとつずつUTMの図法で解けて
007:ランチ
いちばんにランチパックをあげるからとりあえずもうつきあっちゃおう
008:飾
髪の毛を飾る春雨すきながら君の不在は折り込み済みだ
009:ふわふわ
耳かきのふわふわほどにやさしけりゃ今ごろここに座ってません
010:街
あの街に虹がさすのを待っているわたしひたすらタンバリンうつ

011:嫉妬
するすると「嫉妬」という字書いているさらさら昨日のことなど忘れ
012:達
ユモレスク君のポケットまさぐれば春のふかくにいつか達する
013:カタカナ
カタカナの国に来ましたホホホホの下にそうですネを埋めました
014:煮
融点をたずねる前に煮込まれてふつふつ流れもうもどれない
015:型
赤い実の樹の在り処まで切り拓く型紙ゆるふわワンピースの
016:Uターン
Uターンかましませんかあの日々にただ好きだったただそれだけの
017:解
補助線として透明なあなたの瞳 椎骨ひとつずつ解かれる
018:格差
天地格差を説く指に輪が光りせんせいわたしけっこんします
019:ノート
あたらしいノートに折り目つける時したたり落ちる雨はじめての
020:貧
「貧しさに負けた」と言えず向き合えばただのよくある失恋となる

021:くちばし
くちばしになったつもりでずっとずっとはなさなければほしょくしちゃえば
022:職
網棚に忘れさられた情報誌から「就職」の文字がぞろぞろ
023:シャツ
ワイシャツのかぎざきに飛びこんでゆくとりつくろわぬふたりになりに
024:天ぷら
お湯入れます 待つ間は四拍子天ぷら用の菜箸ふります
025:氷
女子たちの軟口蓋にとじ込んだ氷砂糖の甘さがわかる?
026:コンビニ
すこしだけつかれちゃった日にミスター・コンビニエント甘いひかりを!
027:既
みな既に蝕まれゆく贄として祭りの夜にさざめく水面
028:透明
透明なものから端午ほどけゆく 子らの見あげる風沿う燕
029:くしゃくしゃ
祭祀長くしゃくしゃひざをまげ祈るときのこぼれるけもの、告解
030:牛
話してるヒマはないけど牛乳はチンして飲んで、いつもありがと

031:てっぺん
いつもより多めにまわる傘たちの先がてっぺんむかって光る
032:世界
ちょうど林檎をスライスするように世界をざっくばらんにあつかう
033:冠
いつの日か草冠が与えられましょう波間にただよう鳥も
034:序
序詞になるってきめたのに永遠に終わらないしりとりなんてなかった
035:ロンドン
“ロンドンではつ雪ですよ”ふたりゆめみるようにゆするスノードーム
036:意図
意図せずに色づいていく森深く羽さぐりあうみたいにふたり
037:藤
藤棚のような腋窩をもつ人のあたえるへヴンもしくは、触れる
038:→
籐カゴに隠した蝶をまもりたくまあるく眠るバス→花園へ
039:広
抱きとめてほしい気もする送り梅雨 腕を広げて閃光のさす
040:すみれ
丘に咲くいつかの夢でふくらんだ胸の釦はすみれの形

041:越
ね、あなたやっぱりやさしい人でした車窓のガラス越しに手をふる
042:クリック
見も知らぬ人が出てくるかもしらん寝息でそよぐ鼻毛クリック
043:係
わすれもの係おねがい今だけでいいのこの恋あずかっていて
044:わさび
唐辛子わさびにからしトウバンジャン君をいためる用意をしよう
045:幕
幕がひくようにしずかに海、満ちる背中合わせのふたりの中で
046:常識
常識のカタチの日焼け線引きもしないでぜんぶ愛してあげる
047:警
警めというか誓いの顔をして腕にかみつく蚊も熱帯夜
048:逢
もしかしてわたしのことがすきですか?逢魔時のかげろうに問う
049:ソムリエ
パラダイス・ソムリエバッジ輝いてどこにも行かないカタチの愛を
050:災
災いという字をひとつずつほどくいまは静かなあらゆる指が

051:言い訳
あのねでもだってちがうの言い訳と星型ピノがおちてゆく夜
052:縄
花柄のダブルロールを買った日の風を縄縫い物陰にほす
053:妊娠
「すいかバー何本いった?」「ひみつです…」妊娠線とするにらめっこ
054:首
ひとくるり、フルーツポンチをかきまぜてパインの首をさしだす気泡
055:式
空想の結婚式でよかったしブーケは海に身を投げました
056:アドレス
いえそれはわたしの息子じゃありません行方知れずのアドレスたぐる
057:緑
えいえんのスープをわけあうとき花のかげが散らばる波紋の縁だ
058:魔法
魔法しか知らない 満ちてゆく月をたくさんつんでわたしをあやす
059:済
救済者願望めいて水をくむ きみが泣くのをまちわびている
060:引退
よせられてほどかれてゆくje te veuxくりかえされて少女引退

061:ピンク
スモーキーピンク、黄昏かんぺきな君がえらんだかのじょのえくぼ
062:坂
もし月が見えたらそっとふれてみよう階段坂をゆらゆらのぼる
063:ゆらり
ゆらり、目をとじたらなにが見える?頬に手をあててもひとりとひとり
064:宮
さみしさが痛くって鎮痛剤の空きシートつみつくる宮殿
065:選挙
選挙カーうち捨てられた浜辺にもエーテル美しいレヴェランス
066:角
どの角もまがらないこと、どの人のこころもあやめることのなきよう
067:フルート
フルートはもっかんだから泣きたくて秋も世界もばりばりかじる
068:秋刀魚
「丸洗い可能だからさ、気持もさ」猫と秋刀魚をわけあいながら
069:隅
玄関のいちばん隅のサンダルの裏側の砂、生き残る海
070:CD
まんほーる、ちがうCDじゃないったらカラスもとまるしあれは水音

071:痩
蝶、飛翔フーガさいごの麟粉が痩せてはいない大地の味だ
072:瀬戸
瀬戸ものは百人のっても割れませんから煮物山ではお祭りです
073:マスク
枯葉ふむ、がさつとすくう抱きしめる冬を越せないマスクを燃やす
074:肩
軒先の肩なだらかに雨ふらせつたわるものを信じてもいい
075:おまけ
通話ボタン押さえて眠るさみしくてこわいおまけにトイレ行きたい
076:住
サウザントサンデイ丘をこえたって輝いていて住処の灯
077:屑
100円に満たないビニル傘埋まる夢の島から生える屑星
078:アンコール
アンコール雪崩れる拍手に背を向けて二人ひそかにする指相撲
079:恥
寄りかかることを恥じつつ路線図をたどる満員電車の自由
080:午後
はる波形、午後のひかりが反射して世界に聖歌があふれてゆく

081:早
早生まれだからかきみが羽ばたくと不透明膜ふるわすはるひ
082:源
ハモニカがなけりゃ電源タップでも吹いたらいいよ天かけるうた
083:憂鬱
憂鬱の缶ビール酔う与う人でありたしビールください
084:河
河川敷たどってゆけるどの人もポケットティッシュと海原を持て
085:クリスマス
クリスマス前に別れた人と会う寝ぐせなおせよ夢のなかでも
086:符
また胸が大きくなったわたしたち知らない街の切符をひろう
087:気分
木花が死にたえゆくを見ています空の底です良い気分です
088:編
シリカゲルまいて川上弘美短編みたいなねむりをよせる
089:テスト
涙腺のテストでしょうか愛という受難でしょうか眩しいあなた
090:長
「長いもは短冊切りにいたします」みたいな音でふゆが散らばる

091:冬
冬至祭ほのあたたかく腐敗する柚子とわたしと名無しの星と
092:夕焼け
おおやけの夕焼け畑に犀のつの運命は血の味に似てるね
093:鼻
噛みしめるはじけて滲む我慢した涙は鼻で惑うばかりだ
094:彼方
方舟は行ってしまったさいわいの棲むという未知み空の彼方
095:卓
白いものだけを並べた喪失の日の食卓は夕陽を待って
096:マイナス
マイナスななじゅうみりぼると生半可に傷つける気もなくってごめん
097:断
断水に汲む日向水たくさんの思い出に泣くような温もり
098:電気
同情に泣くのは負けだやさしみの電気毛布で獅子舞いしやる
099:戻
あの時に戻れ夕凪くちづけよ美しいこと語れ何度も
100:好
口ずさむ好きなおうたがそめられて白いばら、薔薇こんなに咲いた

 百首あるとすごい長いですねー。

 観賞できていないお題はクーリングダウンにこれからまわらせていただきます。 
 このブログは来年また使いたいので、それまでほそぼそとメモ帳がわりにするつもり。

 あんまり見なくなっちゃうと思うのでお急ぎの用事は右リンクまちへ♪私書箱からどうぞ。

 走りはじめたのは三月、いろいろなことがありました。
 この場を設けてくださった五十嵐きよみさま、
 TB、コメントをくださったみなさま、
 いっしょに走った、走り続けるみなさま。
 
 ふかぶかおじぎ。

 短歌、好きです。