002:一日
■一日は夜に始まる漁火は琥珀の中で灯すべきこと (久哲)
わたしは漁火をみたことがないので、とてもノスタルジーなイメージがあります。
わだつみや魔法使いが弟子に囁く掟のようでもありますね。
昼夜逆転の生活をしていたことがありますが、夜にはじまると考えたことはなかったなぁ。
斬新な提示でドキリとしました。
■一日に一回アタシを確かめて下さい今夜試験をします (伊藤夏人)
おもしろい!
問答無用で謝りますよ、そんなこと言われたら。
字余りが気にならないのは下の句の気持ちのいい唐突さゆえでしょうか。
■波長あわなかった一日が終わり短波ラジオから聞こえる星の音 (富田林薫)
破律がうまいなー。
CQCQ応答せよ、ってこれは大島弓子。
ここまで字が余ったらもう星を指名してもよかった気もします。
しかし破律がうまいなー。
■それからのことは憶えていないのに一日ひとひと裡に染み入る (青野ことり)
ひとひ、って読ませるのが自然。
それまでのことでいっぱいいっぱいになる、
わたしは今ものすごいせつなさが染み入っているんですけど
たぶん違う日に読んだらうふふ、だったり、すりすり、だったりするんだろうとは行の偉大さに乾杯。
ことりさんのリリカリズムにも完敗(うまいこといおうとしました)
■さそり座の毒がまわってゆくさまに焦がれるだけの一日とする (わたつみいさな)
さそり座って短歌界で人気がある気がします。
美川憲一ねえさんとは別の磁力がありますよね。
その耽美さが大々的にフューチャーされて、わたしめろめろになっちゃいました。
■紙袋一日雨に濡れ続けやがて崩れる春のカタチに (たかし)
春雨って切り取り線みたいですもんね、なんか説得力があります。
紙袋も春、どっちもはかない雰囲気をただよわせてすてき。
紙袋には何が入っていたんでしょうか、チューリップとかかな、缶詰かしら。
■あの時のあなたのボケにツッコミが足りなかったと悔やむ一日 (拓哉人形)
リア充…?リア充って使い方をおぼえました、この歌をよんで。
ボケへ一回もうツッコミいれてるのにまだ足りんと。
こんなことで一日悔やめるのなら幸せって言い切ってもよさそうなのに。
いや、リア充たんのうしました。
■一日も飼い慣らせないさみしさを赤い首輪につなぐ地下室 (吹原あやめ)
「も」は「とて」でしょうかね。
こうちょっとネガティブな気持ちって日にあてたほうがいいんでしょうけど赤い首輪がとても魅力的でメロディがなくても地下室でもいいや。
みたいな気持にさせてもらいました。