009:ふわふわ
耳かきのふわふわほどにやさしけりゃ今ごろここに座ってません (松原なぎ)
今回気になったお歌たちです。
取り上げさせていただきましたらTBでご報告、もしできていなかったらコメントか伝書鳩でお伝えいたします。
ふわふわと受け取っていただけたならうれしいです。
敬称略しますことどうぞ、あしからず。
■ふわふわの羽毛のようにやわらかい結論ならば受け入れましょう (jonny)
ふわふわには「あいまい」「やさしい」「やわらか」というのが共通認識でしょうか。
こちらでは羽毛に限定したことであたたかさのようなものまでまとう結論をだすことを迫られておるわけです。
「受け入れましょう」がインパクトでかいです。
■めのまえのこのふわふわとしたものが君にはみえていないようだが (藻上旅人)
すてきなのろけ、ごちそうさまです。
「君」だけが漢字ということで恋の独りよがり感が増した気がします。ぼくとあのこのやさしいせかい、といったところでしょうか?
(妹属性な方なのかもしらん、というのはひとり言)
■ふわふわのアフロヘアーに似てるのにカリフラワーはこりこりしてた (穴井苑子)
ふふふふ。
■カスタードいただきながら ふわふわと きびしいことを口走る口 (斉藤そよ)
やわらかやわらかきびしい、との飴ムチ短歌でしょうか。
口はどなたのお口でしょうか、ああ、ちょっと考えるのがこわい。
■ふわふわをひきちぎったら部屋中がふわふわまみれ 死ねばよかった (ひぐらしひなつ)
ぎゃふん。
思いつめないで!だなんて言えない切迫感があります。
やさしいものにまみれてうっかりこぼれた本音だとしたら、あぁ、やっぱりおもいつめないでください。
■好きすぎたわたしは強く抱きすぎたもうふわふわはふわふわじゃない (岡本雅哉)
「抱きすぎて」ではないことで後悔具合がひしひしと…
わた菓子しかり、ふわふわがふわふわじゃなくなるのって切ないです。
■ふわふわの真綿で首を締めないであなたの籠の鍵をなくした (ぷよよん)
これを見たときにわたしの勝手な連想で 束縛をするならもっと柔らかいシルクのリボンで縛ってほしい (久保奈緒子)を思い出しました。
湿気じみた束縛をされて真綿もしまるっちゅーねん、というところで下の句の悲しい決意。
実は「あなたの籠」には望んで入っていた、鍵は自分が持っているという冷静さがひかってかなしいです。
■新しい家のガラスがふわふわになったら招待状を送ろう (新井恭子)
硬質なガラスもなじむとふわふわになるんですね。
すてき。
■「ふわふわ」と百回書いたその中に「ふはふは」がひとつ紛れるシーズン (やましろひでゆき)
春だからってうかれてますね。
ふわふわ特売会場がうかんでうかんで浮かびました。潜入したい!
余談ですがわたし文語を不勉強にして知りませんで、今回のお題をずらずら見てまわったら文語表記では「ふはふは」なんですね。
違うものみたいだ。
■ふわふわと笑う廊下 この人を好きになれたら楽だったのに (藤野唯)
小悪魔、にはなりきれない優しい方なのでしょうか。
いやでも「楽だったのに」ってけっこう失礼な本音ですよね。
なのになんか「わかるー」とか思ってしまいました。わたしこういう思いでないんですけどね。。
感情や思いでは総じてふわふわなんかもしらんですね。
■ふわふわが口から出そうがまんして生やしてしまう羽真っ白い (間遠 浪)
このいてもたってもいられなくなるむずむず感が、もー、すてき。
なんて言えば良いのか、もう、黙って鑑賞いたします。
ふわふわ、好きみたいです。