まつばら、自作を解説するの巻

 五十嵐きよみさんお茶会に参加しました。
 いろいろな方の作品にいろいろな方から丁寧にイメージだったり技法のアドバイスだったりが寄せられていてとても勉強になりました。
 すてきなお茶会を催してくださった五十嵐さん、ありがとうございました。
 ご一緒させていただいた皆さんにもこころから感謝を。
 またの機会がありましたら、ぜひ参加したいです。
 コメントしようとしたらとても長くなってしまったので別エントリーでお送りします。
 まずは解説させていただいてから、それぞれいただいたコメントに返信してまいりますね。

ユモレスク君のポケットまさぐれば春のふかくにいつか達する

 (お題として「達」という字をよみ込むのが前提としてあります。)

 初句切れです。
ユモレスク/君のポケットまさぐれば春のふかくにいつか達する

となります。

ユモレスク

 初句切れにしたのはまず背景としてユモレスクを奏でていただきたかったからです。
 音楽の題名をつぶやくとみなさん必ず頭のなかでそれを奏でてしまう、という特性を利用させてもらいました。(これって無意識ですけど、すごいことですよね)
 春にお散歩してると自然にユモレスクをうたっているので「春」に達するにはどうしても必要でした。
 CMに使われたり学校の音楽の鑑賞に使われたりしていたのでどマイナーではないはずですし。
 街を歩いていれば音なぞさまざま聞こえてくるものでわたしたちの耳は自分にあうものを勝手に選び取ります。
 逆もまたしかり、恋人と手をつなぐとき、はじめてのドアに鍵をさすとき、メロディは奏でられるのではないでしょうか。
 といいつつ、そういや初句切れで固有名詞持ってくるお歌って印象に残ってないなぁと気がつきました。
 アンパンマン短歌やサザエさん短歌くらいか?

君のポケットまさぐれば

 好きなんです、他人のポケットに手を入れるの。
 「ポケット」は「ポッケを」と悩みましたが助詞をつけても子どもっぽすぎたためポケットをチョイス。
 また、男女間だよ、というのを表わすのにかるーく性的なニュアンスも出したかったので「まさぐれば」をチョイスしました。

春のふかくにいつか達する

 掛詞として。「深く」と「不覚」です。
 春浅く、てよく聞くなぁふかまったらどうなるんだろうと、ことば遊びから発しました。(通常深いのは秋ですかね。)
 春は不覚にも惑いやすい季節ですし。
 春が深くなったら光の満ちた風のない、ユートピアに行けるんじゃないかな、と思います。
 でもわたしの楽園はそんなに広くも近くもなくていいんです、ポケットの奥の折り返しに沿ってゆけばいつかたどりつけるかな、その程度のものです。
 だってもう恋う人はそばにいるんですから、という乙女心をフューチャーしてみました。

 youtubeを使ったことですが。
 コラボレーションやメディアミックスみたいな大がかりなことではなくて。
 題詠ブログでは修行としてわたしのいま出来るすべてで伝える努力を一首ずつしていこう、(あ、もちろん、ことばだけで共感をいただくのが目標ではあるのですが)
 せっかくネットなのだから画像も映像も音楽も使えるものを使ってやろう、まあ、つまり、もったいない精神です。
 「ユモレスク」知らないならこれ聞いたらよろし、という注釈のつもりでした。
 また、200人以上の参加者のいるこの題詠マラソンで、年齢も環境もそれぞれ違うじゃないですか。
 わたしは短歌が好きって共通点だけの方々と少しでも交流したいわけです。
 また、短歌に興味がない方がこのブログ来ても、少しでも読んで欲しいんです。
 その為に分かりやすくすることを考えとります。
 完全な余談ですがバイオリンバージョンもあったのですが転調がいつも怖くてピアノバージョンを貼りました。ドヴォルザークはバイオリン好きで知られる作家さんなので、お時間あればそちらも聞いてみてください。
 


 ではで返信を。

  • 久哲さん

 こんにちはー。
>ルクレツィア・ボルジア  ルネサンス期の
ローマ教皇アレクサンデル6世の娘。
>兄 チェザーレとの近親相姦の疑惑あり。美人。

>ルクレツィア・ボルジアさんを透明な妹として放つ迷宮

 こちらのコメント寝ぼけて見たので三度見くらいしてしまいました。
 「チェザーレ」ってマンガ、去年いっぱい売れたそうですから、ボルジア家の認知度はあがっているでしょうか?
 透明な妹さんかー。ルクレツィア、人気ありますよね。白い結婚を三度したんでしたっけ?

>松原さんの試みがインターネットと言う媒体を使った「ユモレスク」に対する詞書きと言うことは理解できます。

 うーん、解説でも触れましたが実はそこまで考えていなかった、というのが実情です。
 知らない方、思い出せない方がいたらこれ聞いてくれたらよろし、というものぐさな性分によるものでした。
 でもせっかくネットなので、自由にしたいなぁ、とは思っています。

>下句の「春のふかくにいつか達する」素晴らしい表現ですね。
>しかし、下句の素晴らしさゆえ「ユモレスク君」は誰でも良かったのではないか?とも感じてしまいます。
>やっぱり「ユモレスク君」ですよポイントは。

 こう、自分の歌であっても、手を離れたら一人歩きしてほしくて作っています。
 その身としたらとてもありがたいコメントですね。
 ユモレスク君、いいですねぇ、久哲さんのコメントを読むまで思いつきませんでした。
 夢見がちな少年ですね、きっと。藤の花が咲くまでに「ユモレスク君」でなんか書きたいな。

>読者に鑑賞の間を与えなければならないタイムラグ。

 おお、タイムラグ、は考えてなかったです。

>やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君 与謝野晶子
>この歌には、YouToub、グーグル、広辞苑も必要ではありません。

 ぐっさり来ましたねー。
 古語辞典は必要ではないでしょうか、というあげ足取りはやめましょう。
 わかりやすくする、という大義には惑わされないよう自戒は怠らないようにしたいです。

>ご不快でしたら、ご容赦くださいませ。
>むしろ、ただのおっさんに、ここまで考えさせていただいた
>松原様の作品に感謝いたします。

 とんでもないことです。
 わたしももう25歳、楽しけりゃいいじゃん♪とは申せません、考えさせていただいたのはこちらの方です。
 久哲さん、読んでくださってありがとうございました。
 

  • 梅田啓子さん

 はじめまして、こんにちは。

>ユモレスクはドボルザークの曲ですね。
>ユモレスクを聴きながらとか入れたらどうでしょうか。

 はい、ドボルザークです。あたたかい時に散歩するとついつい口ずさむんですよね。
 わたしのなかで、聞きながら、というよりはもう春の散歩=ユモレスクという図式から初句切れをえらびました。
 うーん、ちょっとひとりよがりがすぎるんでしょうかね。

>ポケットをまさぐって、春にいつか達するは素敵だと思います。
>「春のふかくに」は、「ふかく」がちょっとわかりにくかったです。

 なるほど「春に達する」、くらいでちょうどよかったのかしらん。
 けどそうすると横棒がおおくってなんか春じゃないかんじ、しません?
 「はるに達する」だとなんかすこしアダルトな雰囲気ですし…

 梅田さん、読んでくださってありがとうございました。

  • 燕さん

 こんにちは。

>「分かる」より先にああいい歌だな好きだなあと感じました。
>そう。春の足どりを感じさせるユモレスクにも似たわくわくする気持ちがこの歌の基調を流れています。

 あ、あれ、さいきんのわたしの歌の中ではかなり「わかりやすい」歌じゃなーい?
 なぞと悦に入っていましたが、読み手の感覚にゆだねすぎているようですね。
 わくわくする気持ち、感じ取っていただいてうれしい。

>初句唐突に「ユモレスク」と入るのが
>ぐっと引きつけられるアイキャッチとなっているとともに
>一首を通しての空気感を印象付けるしっくりなじむBGMとして流れてきます。

 唐突…やっぱり唐突なのか…
 つまり「ユモレスク」知らない方には初句でさよなら短歌ってことですからね。
 やはりいろいろな方のご意見は聞くべきですね。

>「まさぐれば」がいいですね。
>そして「春のふかくにいつか達する」。
>意味が正確につかめるかというとうまく言えないのですが、
>初句からの流れや<私>と「君」の関係性を説明的でなく
>しかも無理なく受けとめる下の句となっていると思います。

 ふわっとした単語選びは核になる「春」にむけてだったので身に過ぎるお言葉ですが…
 なんだか気がつかないところまで言及していただいて、考えさせられました。

 燕さん、読んでくださってありがとうございました。

  • 五十嵐きよみさん

 こんにちは。うひー、「さん」を忘れていました。ごめんなさい、どうかおゆるしください。(20090429)

>「題詠blog」の前身である「題詠マラソン」の頃には、1つの掲示板に参加者が歌を投稿するシステムだったため、歌以外には詞書をつけるくらいの工夫しかできませんでした
>以前の参加者の中にも、投稿歌1首ずつに写真を添付して、写真と合わせて1つの作品になっているような、興味深い試みをしておられる方がいらっしゃいました。

 はい、そういうの見かけてすごいなぁ、とおもったんですよ。
 けど写真や絵や映像ができたら歌はやってないなぁ、というものぐさ人間なのでこういう形に…

>私がインターネットを通して短歌を始めた頃は、「ネット短歌」などという一種の蔑称がありましたけど(今でもあるのかな?)、
>ネットならではの工夫を凝らした、ネットでしか100%味わえないような作品が登場したら、面白いなあと思います。そういう歌なら、「ネット短歌」と呼ばれて然るべきだと思います。

 「ネット短歌」たぶん今でもあると思います。(完全な蔑称とは言わないまでも)
 「短歌」や「短歌研究」でもたまーーーーーーにみかけますね。 
 わたしの心の師、枡野浩一さんのHPますので。はご覧になったことありますか?
 こういうのもネットをうまく利用した歌だと思います。

>この歌の場合ですが、どうしてもYouTube動画が大きく表示されてしまうため、ちょっともったいないなと思いました。
>存在感がありすぎて、歌を引き立てるというより、動画のほうが主役に見えてしまう(特に再生した場合は)のではないでしょうか。

 大きさ、ご指摘ではじめて気がつきました。少し小さくしてみましたー。
 たしかに注釈にしても詞書にしてもおおきすぎますね。
 レイアウトも自由に変えられるということに気がつき、どうせやるならもっと自分なりに工夫してみようという気になりました。

>初句「ユモレスク」にいろいろな意見が出ているようですが、初句切れでぽんと投げ出されていて、私はちょっと唐突な感じがしました。
>詞書ふうに「ユモレスク」の動画をつけるなら、この初句「ユモレスク」はなくてもいい…というか、もう一工夫する余地があるかなと思いました。

 自分では唐突と思っていなかったもので、正直、びっくりするとともにこのお茶会に参加してよかったなぁ、と思っています。
 たしかにそうですね、動画で何かが説明されていると考える方にはユモレスク自体は言いすぎになってしまいます…。
 けれど「春」が核になっている歌なのでやっぱりユモレスクははずせないんですよ。

 五十嵐さん、読んでいただいてありがとうございました。

  • 月下  桜 さん

 こんにちは。

>「ユモレスク」クラッシックが好きで小学校のときから親しんできた曲名ですので初句からあのメロディーが流れ始めました。
>たんららんら らんららんら らんっららんららんっららんら・・・

 わたしの頭の中では♪ソーラソーラシードミーレ♪です(絶対音感?ありません。笑)


>恋人なのかな?ポケットをまさぐるってかなり意味深でもありますよね。だって上着のポケットはともかく、ズボンやスカートのポケットって・・・(照れ)。だめです。これ以上はかけません。
>あぁ・・・さっきの読みで妄想が暴走しております。
>「春」は「恋」、もっといえば「性愛」。猫の春とでももうしましょうか。
>「ふかく」は「深く」と「不覚(にも)」の掛詞。
>「いつか達する」・・・・・達してしまってもよいものか。
>ゆるやかにはじまった戯れのふれあいがまさぐりになり、春になり達してしまう・・・
>脳内では18禁映像がただいまながれております。
>いえいえ、私はこういうことは滅多におこりえないのです、と申し添えておきます。

 ふふふ、いろっぽい、すてきな読み方をしていただいてうれしいです。
 おもってもみなかった角度からの鑑賞、しかも、しっかり自解説よりもしっかりまとまりと物語があるような…
 滅多にないような現象をひきおこさせていただいたことも、感謝、感激です。

 月下 桜さん、読んでくださってありがとうございました。

  • 庭鳥さん

 こんにちは。

>「ユモレスク」……どっかで聞いたな、クラシックの曲名かなとしか思い浮かばなかったので早速、リンクのYouTubeで曲を聴いてきました。

 あ、知らない方もいらっしゃいましたね。
 ひたすらドボルザークのいろんな角度からの映像がついてますから、びっくりなさったんじゃないですか?

>「ふかく」を漢字で書くと、「深く」かな?いや「不覚」かも……と考えながら短歌をもう一度読み返したところ”まさぐる””達する”が目に付きました。
>ふむ……ひょっとして、「俯角」かもしれないぞ。遠近法とか視覚効果とか、そういう世界かも。
>ユモレスクという曲の鑑賞者(あるいは演奏家?)が、曲の新たな理解を得るべく心のポケットをまさぐって色んな角度から考えているのかもしれない。
>その努力と考察の果てに達する新たな境地……と、妄想いたしました。

 おおおおー、またもや意外なおもしろい読み方があってうれしいです。
 けれどやっぱり固有名詞って知らない方には無理やり読み込みを押し付けてしまいがちなんですね。
 俯角って言葉、知らなかったです。これもお題としておもしろそうですね。

 庭鳥さん、読んでくださってありがとうございました。

  • 詩月めぐさん

 こんにちは。

>春。
>始まりの季節。
>つき合いはじめの二人。
>ポケットに手を入れている君。
>君と手をつなぎたいわたし。
>近づきたいのに近づけない。
>手が冷たいから・・・なんてむちゃくちゃな口実で君のポッケに思い切って手を入れる。
>変だって思われるかも・・・心臓のドキドキが聞こえちゃいそう。
>ふたり照れながら・・・手をつなぐ。
>今はまだぎこちないけれど、少しずつ少しずつ。
>今はまだだけど、いつかきっと。

>ポケットをまさぐって達する春は、大好きな君との未来。

 ああ、ついつい全文引用をしてしまいました。
 すてきな鑑賞をありがとうございます。
 なんて初々しい……

 核のつもりであった「春」からはじめてくださってうれしいです。

 詩月めぐさん、よんでくださってありがとうございました。



 はじめての題詠マラソンではじめてのお茶会に参加できて得るものがたくさんありました。
 また完走にむけてのパワーをいただきました。
 みなさまの解説を読むのもとても楽しみ。